日記ログへ(2002.9.20)



10月10日

韓国が負けた。勝ててもいい試合だったようにも思えるが、 PKに持ち込まれては後は運だ。と言いたいところだが、 一つを自ら外し一つをゴールポストに当てつつかろうじて押し込み、最後の一つは危うく止められそうになりながらもかろうじてゴールに収まったことを考えると、試合の中でも見られた「決定力不足」な面が影を落としているといえなくもない。
ただここで素人がこれ以上書くのはやめておこう。実際試合の中継を見るまでは、なんだかんだ言って雰囲気と勢いで押せ押せ勝ちするだろうなと漠然と考えていた程度なのだから。

それよりも気になって書かずにいられない(病気の深刻化)ことは、見ていたテレビの実況である。特に解説者である。と言ってもアナウンサーも積極的に相槌を打っていたのだが。
イランの一点が無効になったオフサイド判定は、テレビ画面ではっきり韓国DFの脚の方が前に出ている(=誤審)のが確認されてしまったが触れずじまい、なのはまあ許容範囲だろうと思う。
問題は前半点数がとれず、後半に入ってからの解説者の態度だ。解説者は韓国の選手を実際以上に誉め、ボールの占有率をもって「韓国の全く一方的な展開でここまできているんですが」などという。そんなことはない。確かに押し気味だったが、韓国の危ない場面も一度や2度ではなかった。それを「全く」と誇張。まあ、この手の自己主張における誇張表現は、身の回りに全く見られない言行ではないのだが・・・

そして、一番耳に障ったのが、接触で倒れるイランの選手の一挙イットウソクに「いたずらに長く倒れて時間稼ぎをし、競技を妨害している」と非難するのである。 前半にもそのような発言は出ていたのだが、後半に入り観衆の苛立ちと正比例するように負のボルテージは上がっていく。 しまいには、イランの選手が倒れるやいなや、毎回そのことを言い出す。
一番象徴的だったのは次の場面だ。 イランのGKがゴール前に飛び込んできたボールをジャンプしてキャッチした後、素早く蹴った直後に頭の左前の部分を押さえて倒れたのだ。
はたから見れば、頭に何かが当ってその痛みで倒れたのだと誰もが思っただろうような倒れ方だったのだ。それを解説者は、どこも当っていません、なのにわざと倒れて時間を稼いでいる、と興奮気味に断言しておいて、テレビのリプレイ画面でGKがキャッチした際に韓国選手(イドングク?)の手が当っているのが確認されるや、「当ってはいるが大したことはない」。・・・って、そんなの当ったキーパー本人だけがわかることじゃないのか。解説者が何でそこまで言うんだ。名誉毀損じゃないのか。
そもそも、最初の「当っていない」という断言は一瞬の映像から予断と偏見でイラン選手を非難するために喋ったと言われてもおかしくない。解説者としての質が問われるはずなのだ(今後問われればそれは幸いなことだ、韓国のスポーツ実況のこの薄ら寒い状況にとって)。
そんで、延長後半で韓国側もへろへろになってきたら言わないでやんの。 「両チームとも疲弊しきったまさに死闘が繰り広げられています」って、 このまま勝負がつかずPKに入った場合の予防線を張っているかのようだ。 延長戦後半のイランの攻めについて「すでにPKに持ち込もうとする作戦のようです」と、これは偏向に関係無いが解説していた。が、解説者と言うより煽り役の立場上PKに備えていたのはあなたの方ではなかったのか。・・・名前忘れたけど。メモっとくんだった。
*   *   *   *

清水義範という作家の「パスティーシュ」と一部で呼ばれるジャンルの短編の中で、「偏向放送」というのがある。これは、戦後になって自国日本に対するおおっぴらな身内びいきを差し控えさせられてきたNHKがDHK(大日本放送教会)と名前を変えて大威張りで偏向放送をするようになったときのマラソン中継、を想定して書かれた物だが、今日の中継はまさにそれだった。 笑い話ではなく、国営放送がそれをやっているのだ。 救いなのは実はサッカー中継はもう一つのSBSでもやっていて、無等日誌で「扇動マスコミ」と書きはしたものの、解説者が違うため、言うことに差があったらしい、ということだ。これとてちゃんと見ていないから半信半疑だが。

だから、たかが一テレビ局の実況担当者2人の言動、という実にミクロな話題な訳で、これをもって大きい問題へ直リンクさせることは無理がある。でも、日本のNHKで、いや民放であっても、ここまでの偏向放送がなされるか、と考えるとやはり「たかが」だけで終われる問題ではないように思うのだ。 ただの身びいきなら、まだ可愛い。しかし、イランの選手を冗談抜きで攻撃するような内容が全国放送で延々流されるというのは国際感覚の面から問題がある。
これではいけないと思うのはおかしいことではないはずだ。

一緒に見ていた友人の言葉によれば、これで韓国の監督は進退を迫られるのではないか、とのことだ。W杯時のヒディンクと比較されてしまうから、「満足の行く」結果など誰にも出せっこない、とも彼は言っていた。・・・
レッドデビルたちが目を覚ますのはいつのことだろうか。


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