慶州の鉄道の今




韓国慶尚北道、慶州市は日本でも名の知れた観光都市で、新羅の歴史をいだく古都。
その慶州市を南北に貫くように、東海南部線・中央線が走っています。
6月上旬、慶尚北道を訪れる機会があり、慶州に立ち寄ってみました。







大邱市内に泊まった翌日、慶州へ。どうせいくなら、やはり鉄道で・・・東大邱駅を朝8時24分に出発する、ムグンファ号慶州経由釜田行きを利用しました。
上の写真は同列車を牽引する7011号機関車。




下車駅の仏国寺駅に到着。
仏国寺に停車する列車は多くありません。列車で隣になったおじいさんから行き先を問われ、仏国寺駅だと答えると「この列車、仏国寺に停まるのかい?」と言われました。
ホームを見渡すと、乗車した人は数人いたものの、降りた人は私一人でした。地元の人が出かける際に利用する程度のようです。




仏国寺駅舎。植民地時代に建てられたそうです。
屋根の両端の鴟尾(しび)は、なんだか東大寺風だなあ…というのが感想。

この後、仏国寺までバスで行ってみたのですが、寺の屋根に鴟尾はありませんでした。
じゃあ、この駅も「日式」?と思いましたが、その後国立博物館を訪ねたところ、昔の寺の跡から出土した巨大な鴟尾が。・・・同じ様式で建てられていたんですね。




時刻表。釜山方面はすべて釜田行きとなっています。




こちらは、慶州駅。小ぢんまりとした木造の仏国寺駅に比べ、幅も広くどっしりした、煉瓦を使った壁が慶州の玄関口としての存在感を誇示します。
もちろん、全ての旅客列車が停車。07年6月のダイヤ改訂により、東大邱駅〜釜山間の京釜線を走っていた昼間のセマウル号の多くが、京釜線本線ではなく慶州を経由するようになり、多くの列車が停車します。
駅は市街地の東辺に位置し、多くのバスも駅前を経由します。




慶州駅北方の鉄橋を渡ってくる、東大邱からの「通勤」列車。慶州駅にしばらく停車した後、折り返して再びこの鉄橋を渡り今度は浦項駅へ向かいます。

追記(2008年3月):その後、再びのダイヤ改定により、東大邱〜慶州〜浦項の「通勤列車」は全廃され、気動車の運行もなくなりました。慶州折り返しで東大邱と浦項とを結ぶ旅客列車も現在は無いようです。またこのダイヤ改定で、慶州と浦項とを結ぶ列車は一日二往復のみとなり、列車の利便性を大きく下げる形になってしまいました。




現在、慶州市西方の郊外では韓国高速鉄道の東大邱〜(新)慶州〜釜山間の東延伸工事が進んでいます。開通すれば、在来線の経路も変更になり、慶州駅・仏国寺駅を含む慶州中心部周辺の線路は移転・廃止されます。
鉄道単独での利便性が大きく損なわれるのは残念なことですが・・・慶州〜仏国寺駅の車窓からは、博物館やいくつもの古墳が眺められました。逆にいえば、いくつもの遺跡地のそばに鉄路が敷かれていることになります。


実例:観光名所の一つ、雁鴨池(新羅時代の庭園跡)のすぐそばを通過するセマウル号

この区間の廃止は、観光都市慶州のひとつの選択として見守るしかないのかもしれません。ただ、個人的には廃止以外の選択肢もあるのではないかとも思いますが……


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