■旧「慶全線」潭陽−金池・未成区間■

帯江面−金池面


前のページ、駅建設地跡の先の川には何も残っていませんでした。そのすぐそばに帯江面の面事務所所在地である沙石里の中心街があります。中心といっても小さなものですが、役所の建物や幾つかの商店が軒を連ねていました。





沙石里の中心にある三叉路から、金池方面に向かう道路を少し行った道端から、右側に広がる水田を眺める。
中央に木が一本立っているあたりが未成線の築堤・・・ならいいのですが、築堤ではなくて前のページの最後の写真に写っている川の堤防です。
未成線の築堤の行方はこの辺りだと全く分かりません。あるいはこの写真を撮影した足元に、まさに道床があった可能性もあります。


さらに中心地から離れたところ。
この辺りになると、左側にはだんだんと山が迫り、右側からは蟾津江〔ソムジンガン〕が近づいてくるので、ほぼこの場所を未成線の軌道が通っていたと推測できます。ただしご覧の通りその痕跡はほぼ残らず消されている状態です。
ここからはずっと車道の脇を歩いていくことになりました。ちなみにこの辺りから、金池駅付近の合流地点辺りまでは地図で見ると約6キロほどですが、この後道路を歩いたときにはもっと長く感じました。


やがて、切り立った河岸崖を横切るような箇所に差し掛かります。右側に見える水面が蟾津江。道路上には落石注意の標識が(道路右側の、黄色い三角形の標識)。


道路の谷側。かなりの高低差であることが分かります。
この写真に写っている石垣が未成線建設時のもの、か否かは定かではありませんが、少なくとも当時でも難工事だった事は推測されます。


蟾津江を見おろす。水面を泳ぐ水鳥。





さらにしばらく歩いていくと、河岸の斜面はそれほど急ではなくなり、道路も余裕のある感じで続いていきます。
急なカーブもなしに続く道が軌道跡らしい、といえなくもないかもしれませんが、蟾津江沿いをえんえんと進んでいく道なので、実際にはあまりそれらしさは感じられませんでした。
ちなみに、道路の左側に見える青い瓦屋根の小屋はバスの待合所で、右側に見える赤い看板は韓国の田舎によくある「○○ガーデン」という類の料理屋です。



やがて道路は南原市帯江面〔テガンミョン〕から同市金池面〔クムジミョン〕へ入っていきます。
・・・このあたりのカーブがちょっとそれっぽい?かどうかよく分かりませんが。


面境からさらに歩いた地点にあった橋の橋台。
分かりにくいかとは思うのですが、この橋台の、橋梁が載っている部分は新しいコンクリートですが、その脇の張り出した部分の外側は石垣のようになっています。おそらく元々あった未成線の橋台の中央だけを新しくして、脇の部分はそのまま活用したのではないかと推測されます。


その石垣部分を、築堤の下に下りて接写。




この先を進んでいくと、似たような橋がいくつかあらわれました。全く痕跡の残っていない橋もあれば、そうでもないものもあります。


上の2枚の写真は同じ橋の橋台を撮影したものです。左側が金池側、右側が帯江側(淳昌側)です。
この二つの橋台には以下の様な違いがあります。(1)コンクリートの質や、表面が違う。金池側の橋台のコンクリートは表面が滑らかで、コンクリートを流し込む際にできたと思われる枠の跡が残っているが、帯江側のそれは表面に気泡のような穴が目立ち、一方で枠の後は顕著でない。また、年代も帯江側のほうが古いもののように見える。(2)形が違う。金池側は橋梁の真下から外側に張り出した台形の部分は真上から見ると直線で、一番端の部分だけが築堤の側にカーブして終わっているが、帯江側は台形の中間辺りから丸みを帯びて築堤を取り巻くような形になっている。
(1)はコンクリートの作られた年代の違いを、(2)は土木的な技術の違いを示唆するものだと思います。つまり、やたら長ったらしくなりましたが、金池側の橋台はこの道路橋を架ける際に築造されたもので、一方の帯江側の橋台は鉄道建設当時に造られたものがそのまま流用されているものと考えます(100%の確信はありませんが)。


しばらく道を行くと、道路の右側に、縁石のようなものが現れました。


周りには集落や人家などが無いので、なぜこんな所に?と思いますが、長さや高さ、そして形状などから鉄道の停留所の跡(正確には建設の跡)と見て間違いなさそうです。縁石のすぐ上まで藪が生い茂っていて現在はホームには見えませんが、建設当時は縁石に沿って、ある程度の幅の敷地がプラットホームとして均されていたのではないでしょうか。



停留所跡から5分足らずのところに、小さな沢を渡る地点がありました。上からでは分からなかったので藪をかき分けて降りていってみると、卵形のアーチ橋を見つけました。
かつての軌道は確かに、道路の下に今も息づいています。


>全羅線金池駅付近の未成線の遺構(工事中)



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