五柳駅にて
(全羅線/全羅北道任実郡聖壽面)



秋夕休暇の初日。休暇の後半に、後に大被害をもたらす台風「メミ」が迫っていたこともあり特に何の予定も入れていなかったので、以前訪ねたオス駅の二つ北隣の五柳(オリュ)駅に行ってみました。光州からですと南原まで直通バスで1時間ほど、そこから直行バスに乗り換え、オスのバス共用停留所まで行き、さらに任実(イムシル)行きの郡内バスに乗り換え、五柳にて下車します。

任実行きの郡内バスは車内放送も何もなく、ほぼ純粋に地元の人たちのためだけに運行されているようなバスでした。ずっと窓の外を見ていたのですが、五柳駅らしき駅舎を目にしたのは片側2車線の幹線道路を突っ走っているときでした。とにかく降ろしてもらわないことには仕方ないので運転席まで歩いていきその旨を伝えると、少し行き過ぎたところの信号のある、幹線と直角にぶつかる小さな橋のたもとに降ろされました。もちろんバス停の標識などありません。
しかし幸いにも、橋の反対側がちょうど五柳駅の入口でした。

この五柳駅やオス駅を含む全羅線の任実−金池間は、2004年4月に新線に切替えられる予定です。


五柳駅の北側の踏切。



踏切周辺に少し佇んだ後、駅のほうへ向かおうとすると、低い唸り音が聞こえたかと思うと背後の踏み切りがいきなり鳴り出しました。いかん、どっちだ。と慌てつつ見回すと、駅の向こうの方から列車がやってくるのが見えました。ソウル行セマウル号です。タブレット授受のため減速はしているのでしょうが、それでも体感的にはかなりのスピードで駅を通過し、こちらへと向かってきました。



後から見ると、この最初に撮った写真が今回の中では一番ましだったような・・・(苦笑)



さて、駅についてみると、なんと先客が居ました。しばらく様子をうかがった後、駅員の方に少し写真を撮りたいのですがと頼んでみると、「一緒に来たのかい?」と訊かれました。
とりあえず声をかけて、少し話をしたところ、秋夕の連休で御家族とともに帰省しているソウル在住の大学生だそうです。


全羅線・五柳〔オリュ〕駅駅舎。無窮花号が停車しないので、この駅に止まるのは一日一往復の統一号列車だけです。
ちなみにこの駅、待合室とプラットホームの間に改札らしき設備がありません。まあ、客の乗り降りなど、まずないはずですが・・・






駅構内に入って、最初の列車がやってきました。いざ・・・

と思ったら緊張と予想以上の震動にカメラの震えが止まりません。・・・で、出来たのが下の写真です。

・・・言葉もありません。

ちなみに列車の先頭付近、三脚を構えて、体を乗り出して通票を掬おうとする瞬間を捉えようとしている(あるいは捉えた?)のが、その学生さんです。




今度こそは・・・と思いつつ、雨の中列車を待ちます。駅員の方がホームに出てくるまでは列車は来ないので、あちこち歩き回ったり写真を撮ったりしていました。


左上:信号てこ。標語板には「(無災害)指摘確認」の文字。
左下:レール移動のため(多分)の小さな車輪つき運搬 器具(多分)。
右:特定統一号の料金表。
この駅に止まる特定統一号は下りが早朝5時57分発、上りが夜21時23分発の各一本のみで、この駅に止まる定期旅客列車はそれが全てです。「誰も降りないよ」と駅長さんはおっしゃってました。



そのうち、駅舎のほうからベルの音と無線の声が聞こえてきました。あわててホームの方に戻りました。駅員の皆さんが線路周辺に出てきて、きびきびと作業をはじめました。
やがて遠くから、低い唸りとともにディーゼル機関車が巨大な体躯を現わします。


駅の待避線に進入してくる下り貨物列車。上りの旅客列車、無窮花号ソウル行の通過を待ちます。






下り列車から受け取ったタブレットを、上り列車の通過する側の台にセットして、OKの合図。程なく上りの無窮花号が構内へと入ってきました。



通過する上り無窮花号の運転手がタブレットを掬い上げました。後ろに大きく揺れる輪っか。


大きく前後に揺れます。ほとんど頭上に近いところをタブレットが飛んでいく直前に大きく汽笛を鳴らされ、思わず背にしていたホーム内の植木の縁石に躓きかけました。

 カメラを構えた時点では一応目安としての黄色い線より内側、の辺りには立っていたつもりでしたが、機関車の車体の大きさとタブレットの振れる範囲を考えるとそれでも近すぎたのかもしれません。今後の反省材料としたいところです(またこんな写真を撮るかは分かりませんが)。





すれ違う2本の列車が去った後で、駅職員の方が駅舎内に入れてくださいました。




未だに現役の通票箱です。手前が任実側、奥に写っているのがオス側になります。
しかしこの箱も、来年4月、この区間が新線に切り替わると同時に、長い間のお役を御免となります。
(しっかし、この写真もひどいです・・・なんか他に撮り様はなかったのかと自責しきり。)



帰り間際に、駅長の方が机の中からクリアファイルを取り出し、見せてくださったのですが、そこには日本から来てこの駅で写真を撮っていった、ある日本人の方から後日送られてきたお礼の手紙とともに、手紙に同封されていた写真、それに拡大して紙にプリントされたものが収められていました。
その写真の完成度と美しさといったら・・・「写真を撮るなら、このくらいは撮らなきゃねぇ」と笑いながらおっしゃる駅長さんの言葉に背が縮こまる思いがしました。いくら下手の横好きとはいえ、せっかく撮るならもうちょっと精進しなければなあ、と思いを新たにしました。




五柳駅の駅職員の皆様、それにソウルの大学生の方、お世話になりました。ありがとうございます。



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