谷城・谷城鉄道公園探訪


■谷城鉄道公園[沈清の郷鉄道公園]


全羅線谷城(コクソン)駅から数百メートル離れたところにある旧・谷城駅を再整備して建設中の鉄道公園。 構内に旧式の無窮花号の客車が展示してありますが、いまだ公園としての形は整わないまま、とりあえず出入りは自由なので勝手に見学できる、という現状です。訪れた当時は真っ黒な蒸気機関車も留め置かれていたのですが、後述する事情により現在はありません。




鉄道公園の入口。
駅舎の前に建てられているゲートには、「沈清の郷鉄道公園」と書かれています。ここ谷城は映画「風の丘を越えて〜西便制」で日本でも知られるようになった、パンソリ(唱劇)の有名な演目(といっていいのかな?)である「沈清伝」ゆかりの地として宣伝されています。そのため、谷城郡のいわばマスコットキャラクターとして、あちこちの広報物に漫画風の絵柄で描かれた主人公の沈清(シムチョン)が登場します。
そうした流れを受けてこの鉄道公園にも、「沈清」の名が冠せられているようです。




旧・谷城駅舎全景。装飾性は少なく、シンプルで剛健な造りに見えます。
・・・ですが。この旧駅舎前は、昨年の夏ごろに、谷城から智異(チリ)山方面に向かうバスの車窓から見ているのですが、その時の記憶では、屋根は確か緑色だったはずです。私の記憶違いの可能性もないわけではありませんが、屋根をよく見てみると、極最近葺き替えられたように見えます(参考:屋根の拡大写真)。旧谷城駅舎については、湖南線の旧羅州駅に似た印象を持っていただけにこれは意外・・・というか残念でした。せめて、色だけでも緑色に出来なかったものでしょうか?
もし、現役だった頃の谷城駅舎をご存知の方がいらっしゃいましたら、掲示板の方にでも当時の様子について何かお書き下さると幸いです。

※屋根に関しては、後述する映画の撮影のためこういった色にされた可能性もあります。


駅舎のそばにはトイレがあり、家族連れの車が時おり寄って来ていました。その脇には、整備事業のための事務所もあるのですが、日曜の今日は無人だったようです。
駅構内には、駅舎脇の扉から事実上フリーで入れるようになっていました。30代前半くらいに見えるカップルが一組、ドライブのついでに遊びにきていただけで、あとは閑散としていました。



正面に展示されている、無窮花号客車。手前のホームに信号てこが見えます。各車輌は並行ではなく放射線状に並べられ、開いているドアから車内に入ることも出来るようです。今回は時間が無くて中を覗かずに立ち去ってしまいましたが・・・車番とかのチェックも本当はした方が良かったのでしょうか。




そして、その右手の線路上に置かれているのが、「ミカ3系」161号のマークのついた蒸気機関車と客車3両の編成です。

先頭の蒸気機関車。錆びが目立ったり、応急処置のようにペンキを塗ってあったりと、だいぶ傷んでいる印象を受けました。




客車も含めた列車の全体。現時点では運転席に上ったり、中に入ったりといった見学用の整備は行なわれていません・・・というより、野天の下に放置されている、といったほうがいいように思います。
ちなみに、客車の先の方へと伸びる線路の脇には腕木式信号も残されています。線路はこの先の鴨緑駅まで続いていて、鴨緑駅で現在線と接続しています。


この日訪れた時間には逆光で、日差しも強かったため前面がきれいに撮れませんでした。

(追記)後で分かったのですが、この機関車と客車は展示用に置かれたものではありませんでした。「太極旗を翻して」"태극기 휘날리며" :日本公開時は『ブラザーフッド』)という映画のロケがここ旧谷城駅で行なわれた際に、撮影に使用されたものだそうです(撮影の際に機関車は運転されず、後ろから押して撮影したそうです)。2003年末にしばた様が訪問された際には、すでに機関車はどこかに運ばれてなくなっていたとのことです。

さらに後日分かったことですが、機関車は慶尚南道の陜川郡に売却されたそうです。陜川郡では同じ“太極旗を翻して”(=『ブラザーフッド』)の、平壌の市街戦のシーン等を撮影したセットが残されており、郡がそれを観光の目玉とする為の補強に機関車を購入したということです。なぜこの谷城に留め置かれなかったかというと、谷城郡と全羅南道に購入するだけの予算がなかったからだそうで・・・何とも惜しいことです。



さて、目を転じて構内を見渡すと、駅舎の構内側の地面やホームの上は、真新しいコンクリートで土台が作られていて、さらにその上を完全に新しく舗装し直すようです。往年の面影・・・というものからはちょっとはなれた方向で整備が進んでいるような印象を受けました。


ホームの上に残る信号てこと、整備工事中のホーム。・・・なにやら、ペンキか泥の飛沫のようなものがてこの一部に付着しています・・・。
ホームの上の松の木は周りを赤いレンガで囲まれ、整備途中のホームには低い円柱のようなものが並び、その真ん中に鉄のネジのようなものが立っています。この先、ここに何を(何かを)建てるつもりなのかは、今一よく分かりませんでした。




ホームに停まっていた小さな気動車。たぶん、これが子供たち(と保護者)を乗せて、現・谷城駅前の鉄橋のたもとからここまで、あるいは鴨緑駅まで運行されるものではないかと思われますが、少なくとも秋の日曜日のこの日、運行される気配は全くありませんでした。



列車の時刻のため駆け足で見て回り、かつ写真をとっていたのであまりじっくり見れなかったのが心残りではあります。しかも、蒸気機関車がその後まもなくしてここからいなくなる運命にあったとは知らなかっただけに、一層・・・。






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